人気ブログランキング | 話題のタグを見る

鼻高山の神々 (4)伊努(いぬ)神社 謎の「イヌ」

伊努神社 島根県出雲市西林木町276

鼻高山の神々 (4)伊努(いぬ)神社 謎の「イヌ」_e0354697_21444503.jpg

『出雲国風土記』の奈良時代には、伊努(いぬ)神社の辺りを、出雲郡伊努郷と言いました。

出雲郡だけではなく、松江市に近い秋鹿郡にも伊農(いぬ)郷があります。

奈良時代の漢字は当て字の場合が多いので、どちらも同じ「いぬ」です。『出雲国風土記』秋鹿郡伊農郷の記事です。


伊農郷。郡家の正西一十四里二百歩の所にある。

出雲郡伊農郷に鎮座していらっしゃる赤衾伊農意保須美比古佐和気能命の后、天瓺津日女命が国をめぐりなさった時に、ここにいらしておっしゃられたことには、「伊農よ【原文…伊農波夜。」とおっしゃられた。

だから、足怒(あしはや)る伊努という。〔神亀三年に字を伊農と改めた。〕(島根県古代文化センター編 『解説 出雲国風土記』 今井出版)


赤衾伊農意保須美比古佐和気能命と天瓺津日女命


ここに登場するのは夫婦神です。
国引き神話の、島根半島を引っ張ってきた八束水臣津命の御子(息子)である「赤衾伊農意保須美比古佐和気能命(あかふすまいぬおおすみひこさわけのみこと)という長たらしい名前の男の神様と、天瓺津日女命(あめのみかつひめのみこと)です。


伊努神社 本殿  島根県出雲市西林木町276

鼻高山の神々 (4)伊努(いぬ)神社 謎の「イヌ」_e0354697_21445781.jpg


ちなみに天瓺津日女命の「あめの」がついているので、高天原系の神と思ってしまうけれど、たぶん、東出雲のカミムスビ系の神ではないかと思います。西出雲の神と、東出雲の神の結合。
『出雲国風土記』もおそらく、陰陽学的な神の位置づけがなされたんではないかと。

天瓺津日女命は、里帰りをしたのか 途中 秋鹿郡伊農郷を通りかかった所、もうすぐ会える出雲の「赤衾伊農意保須美比古佐和気能命」を想って、気持ちがたかぶり、夫の神の名前を呼んだのではないかと思います。(あくまで私の解釈)

名前が長いので、一番のエッセンスが、「いぬ」なのでしょう。

「イヌ」の解釈

当然ながら、「イヌ」は、ワンワンの神ということではない。
写真は、島根県松江市雑賀町1663 賣豆紀(めづき)神社の子宝犬 

鼻高山の神々 (4)伊努(いぬ)神社 謎の「イヌ」_e0354697_11481793.jpg

出雲国の神社名のほとんどが、解読不能な名前です。
おそらく、奈良時代の古語よりももっと古い名前なのだろうと思います。

弥生時代はまた別のことばを使っていたのだと想像します。

ちなみに、加藤義成著『校注出雲国風土記』では、〝赤衾はイヌ(寝ぬ)にかかる枕詞。神名は伊農の大洲見日子、狭別の神の意であろう。沖積地の神

しかし、古語辞典に出てくるような言葉は、奈良時代以降の言葉で、私は違うんじゃないかと思います。

寝ぬ(寝る)の他には、

往ぬ(いぬ)・・・消えていなくなる。去る。

というのがあります。

また、現代の出雲弁で、「帰る」の意味で、「いぬる」「いのう」と発音するものもあります。

ドラビダ語でも調べてみましたが、見つからない。

現代のアイヌ語では、 「聞く」というのがあるらしいです。

サイの神は、「耳の神」という面も地域によってはあるらしいので、案外そういうのかもしれませんが、よくわかりません。

伊努神社境内の左はサイの神(双体道祖神) 右はわかりません。

鼻高山の神々 (4)伊努(いぬ)神社 謎の「イヌ」_e0354697_21452749.jpg


PR




名前
URL
削除用パスワード
by yuugurekaka | 2025-09-29 11:58 | 鼻高山 | Trackback | Comments(0)