道祖神の原像 (4)境界神  ヘルマ

ラフカディオ・ハーンは、木の根神社の訪問の際、このように述べている。
「これは多くの原始民族に共通な性器崇拝の名残であって、昔は日本にも広く流布していた
ものだ。それが政府の弾圧をうけるようになってから、まだ五十年とはならない。」
              "小泉八雲著・平井呈一訳『日本督見記 下』 恒文社 " 

では、ギリシャはどうだったのだろう。
ネットで調べると、〝ヘルマ〟という古代ギリシャには道の神としての石棒とした造形物がある
ことを知った。以下のヘルマは、ポリュエウクトス が造った古代ギリシャの政治家デモステネス
をかたどったヘルマである。
原始時代ではなく、古代ギリシャの紀元前280年頃のものである。

画像出典 ウィキペディア ヘルマ

〝ヘルマ(ギリシャ語ἕρμα, herma, 複数形:hermai, ヘルマイ)は、石もしくはテラ
ッタ、青銅(ブロンズ)でできた正方形あるいは長方形の柱。柱の上にはヘルメースの胸像
が乗っており、通常あご髭を生やし、さらに柱の部分には男性の生殖器がついている。古代ギ
リシャの神ヘルメースの名はこのヘルマに由来するという説があり、一説には、ヘルメース神
は商人および旅行者の守護者としての役割を担う前は、生殖力・運・街道と境界と関連した、
ファルス(男根)の神であった。( ウィキペディア ヘルマ より)

石柱に写実的な彫刻。それだけでよさそうなのに、なぜ男性の性器を描く?と思うが、この性
器が、この石棒神の本質であったから描かざるを得なかったのだろう。

高群逸枝氏の文章が、頭に浮かんだ。
〝交通の神が性の神でもあるというのは、族外婚段階のヒロバのクナドを考えればわかろう。
クナドは文字通り神前共婚の場所であるが、またそのことによって他群と交通し、結びつくこ
とになる場所でもある。  
原始時代では、性交は同族化を意味する。排他的な異族の間では性の交歓だけが(ときには性
器の見せ合いだけでも)和平への道であり、理解への道であり、村つくり、国つくりの道でも
あった。
大国主命の国つくり神話が、同時に妻問い神話になっているのも、この理由にほかならない〟
(高群逸枝 『日本婚姻史』至文堂 )

つまりは、ギリシャの「道祖神」ヘルマも、共同体と他の地域の共同体を「結ぶ神」だったの
かなあと思うのである。
それはまた異界なる共同体の接点として、攻めてこないような、悪霊を封じる塞神としての役
割をもつようになったのではないかと思う。

道の神は、性神であり、また交通の神ー交易の神ー商業の神へと変容したのではないか。


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by yuugurekaka | 2017-09-02 22:31 | 塞の神 | Trackback | Comments(0)