出雲臣の謎 斐川平野 (2) 原始的姓氏 出雲積

まずは、昭和43年3月の斐川町役場発行の町誌編集委員会の論文、

美多 実「『記紀』出雲神話に見えたる古代出雲小国家」の引用です。


朝妻里 稲城の森


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“『正倉院文書』としての天平十一年の『出雲国大税賑給歴名帳』をみると、当時の氏族配置

一班が知られる。その他で出雲名を冠するものに

出雲臣 出雲部 出雲積首

があり、特に「出雲積首」という奇妙な卑姓のものが出雲郡朝妻里に格別多く存在している。

 この歴名帳は賑給保護の対象となる様な要保護氏族のみあげてあるので、之でもって奈良時

代の全氏族配置を云々する訳にはゆかない。それでも朝妻里と出雲積首とは前記の如くある関

連があるのである。問題は「積」と「首」の解釈である。Tumi=Tomi=Tobi で

ある。

積の転訛は富である。(出雲では富をトビと発音している。)積富は理解不能でも富=飛一寸

理解できないかも知れない。

 しかし「富田林」が「とびたばやし」と読まれるのと同例であり、やはり転訛である。

 したがって、出雲積首は正しく出雲富首であり、「出雲の富村の首族」であり、その守護神

である富明神こそ正に出雲神社に該当するのである。”


この積が富に転訛という説はちょっと強引な気もしますが、ともかく出雲郷には出雲積という
家が集中していたということです。

この「出雲積」とはなんでしょう?

インターネットで検索すると、なぜか、ウィキペディア穂積氏が出てきました・・・。下記は

その引用ですが、


“「穂積(穂は「火」の意味とも)」の氏は、出雲積、鰐積(
和珥氏の原始的姓氏)、津積(尾張
氏の原始的姓氏)、阿曇(阿曇氏)などの例から見て原始的姓氏であり、物部氏ももとは穂積氏で
宗は穂積臣であって、豪族系の臣姓をもっていた。”(→ウィキペディア 穂積氏

そうかあ、物部氏も、もとは穂積氏か。

と、なれば天穂日命を祖とする出雲国造家も、本来、穂積の一系統になるんではないだろうか…
と思いが浮かんできました。だけれども、出雲臣を名乗るから、頭が混乱してきます。

加藤義成氏もまた、「『津見』の考」(1978年1月)の論説の中で、出雲積に着目しておら

れます。


“この表にみられるように「出雲積」は、この出雲郷周辺に集中し、出雲大社の膝元杵築郷に

も見えないし、神門郡にも神戸里に一戸あるだけで、他郷にみえない。しかも首(おびと)姓

を持つものは出雲郷だけに限られ、その大部分は朝妻里にあった。律令制の施行に当たって出

雲郡の郡家がここに置かれたのは、この氏と深い関係があると思われる。思うに「出雲積」は、

この出雲郷辺の集落の統合主宰者として、出雲大社の司祭者でもあったため、大和王朝から誅

罰を受けたという崇神紀の出雲振根や、景行紀の出雲健の伝承は、おそらくこの「出雲積」家

の衰退を物語るものであろう。そして国譲り伝承に見られるように、全国的に信仰基盤を広げ

た出雲大社の司祭権が、熊野大社の司祭者として東出雲の総合主宰者であった意宇氏(崇神紀

の呉信仰基盤を広げた淤于氏)に移り、意宇氏は出雲臣を称して出雲国造に任ぜられたのであ

った”


元々の「出雲積」の姓氏発生源が、この斐川町出西であった、(それを名乗っていたのは、た

ぶん神門臣であろう)しかしながら、西出雲の勢力の衰退とともに、「出雲臣」として東出雲

の勢力が名乗るに至った。そういう話です。


しかし、東出雲の勢力が西出雲まで勢力下に置いたというのが通説になっておりますので、そ

ういう論になるのはしかたないのかもしれません。富家と出雲国造家の2家が出雲姓を名乗り、

そして2家が、共に西に移動してきたということなど、思いもよりませんでしたから。


しかし、出雲積は、西出雲だけではありませんでした。

1999年度から、島根県教育委員会が、30年ぶりに始めた出雲国府跡の発掘調査では、井

戸の下層から、「東殿出雲積大山、伊福部大」と書かれた木簡が出てきました。

出雲積の一族は、東出雲にもいたのです。


出雲国府跡 


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by yuugurekaka | 2016-05-08 01:18 | 出雲臣の西進 | Trackback | Comments(0)