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荒神さま(3) 吉野裕子 荒神=アラハバキ神説

2か月ぐらい前の事だったか?うちの家の後ろから、突然にょろにょろした黄金色に近い蛇が

現れました。私は突然のことでもあり、蛇が大の苦手で驚きました。蛇も驚いたようで、すぐ

庭のつつじの下に隠れました。どういう種類の蛇だったか、それも確認もできず、後からイ

ンターネットで調べたところ、たぶんアオダイショウだったんではなかろうかと思います。


自分には恐怖の対象である蛇が、どうして、出雲族の神となったのでしょうか。

蛇は出雲族だけではなく、祖霊とみなされ世界中で広がっていったとされてい

ます。

それがなぜなのか。


民俗学者吉野(よしの)裕子(ひろこ氏によれば、その基本要因として

“(1)外形が男根相似 (2)脱皮による生命の更新 (3)一撃にして敵を倒す毒の強さ”

の3点であるとされます。

また“ 次のようにも表現することができる。つまり、

(1)生命の源としての種の保持者(2)永遠の生命体 (3)無敵の強さ ” 
           (『山の神 易・五行と日本の原始蛇信仰』講談社学術文庫 25頁)

3か月ぐらい前に見たNHK「あさいち」(夏の恐怖スペシャル)で、人間が生まれながらにし
て怖いと思うのは、「へびと怒った顔」であるといっていました。他のものは、生まれてから
恐怖を学習するらしい。
(1)(2)(3)に加えて、原始民族は、人智を超えた存在として、「畏れ」を直観して、神
と同一化していったのではないのかしら。

客神社(きゃくじんじゃ) 島根県松江市島根町加賀2401番地
祭神 伊邪奈美命 
同じ客神社でも、隠岐島では、素戔嗚命を祭神とする神社が多いようです。

荒神さま(3) 吉野裕子 荒神=アラハバキ神説_e0354697_22515290.jpg

吉野裕子氏は、荒神の考察として、アラハバキ神を置きます。
“諸記録によって、アラハバキ・門客人・客人などと呼ばれる社を概観したが、これらの神が
荒神につながっている例が、島根県八束郡千酌の尓佐神社に付属する荒神社に見られる。この
社は尓佐神社の境外摂社であって、本社から数百メートル東寄りの森のなかに祀られる荒神の
社であるが、同時に客人社でもあって、その通称は「オキャクサン」あるいは「マロトサン」
である。
 さらに重要なことは、この社が昔は、アラハバキサンと呼ばれていたということである。爾
佐神社の塩田宮司は、筆者にかつて「いまはまったく忘れられているが、この荒神社は昔は、
アラハバキサンと呼ばれていた。島根半島にはこうした例は少なくない」と教示されたことが
ある。つまりアラハバキ・マロト・荒神の三者はひとつなのである。”
           (『山の神 易・五行と日本の原始蛇信仰』講談社学術文庫 92頁)

爾佐神社(にさじんじゃ) 島根県松江市美保関町千酌1061

にさは「幣(ぬさ)」(御幣)ではないかと説があるという。


荒神さま(3) 吉野裕子 荒神=アラハバキ神説_e0354697_14222467.jpg

そして、

氏は伊勢神宮のハハキ神から考察を進めていきます。
“この神は天照大神を奉祭する内宮の御敷地の主であるが、おそらく新米の神にその場所をゆ
ずって、自身は土地の守護神の形で、御敷地の外側に鎮まっている。そうしてこの神は、蛇神
ゆえに辰巳の隅に祀られことになるが、これはそっくりそのまま、各地の古社におけるハハキ
神のありかたであった。
 宮の敷地の外側に祀られるハハキ神は、いわば門人であり、門の傍らに居るために客人のよ
うに錯覚される。こうして一見したところ、後から来た客人のように見えるハハキ神は、実際
は宮地の旧主であり、地主神なのである。
            (『山の神 易・五行と日本の原始蛇信仰』講談社学術文庫 93頁) 

そして、氏はそこから、荒神への由来を推理します。
“この御敷地の外側に顕現するハハキ神は、その内から外へあらわになった意味で、「顕波波
木」と言われるようになり、ここにアラハバキの神名が神名が新しく生まれることになる。こ
の「アラハハキ」には「顕」よりはやさしい漢字の「荒」があてられて「荒波波木」となり、
やがてこの「荒波波木」から「波波木」が脱落してたんに「荒神」となり、それが「コウジン」
と音読されるにいたったのではなかろうか。”
              『山の神 易・五行と日本の原始蛇信仰』講談社学術文庫 93頁)

蛇の古語「ハハ」(「カカ」とも言われる)と「木」で、「ハハき」⇒「箒」「伯耆」の転訛
は、そういう気がしますが、「アラハバキ」となると、少々びっくりです。
アラが「」(現)なのでしょうか。「アラ」が鉄の古語説もあるようです。

荒神さまは、神社神道以前からの信仰だと自分も思いますが、
現在「ハバキ」という言葉が刀をはめるハバキとかに使われているところなど考えると、性的
結合を意味する性格も感じます。
そういう意味で、産土の神につながっていくようにも思いますし、そうすると塞ノ神とどこが
どのように違ってきたのか、いろいろ思い浮かんでまいります。



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by yuugurekaka | 2016-09-22 23:59 | 荒神様 | Trackback | Comments(0)